
過活動膀胱
OVERACTIVE BLADDER過活動膀胱とは
「 過活動膀胱」は、尿がたまる前から急に強い尿意を感じたり(尿意切迫感)、トイレが近くなったり(頻尿)、時には間に合わずに漏れてしまうといった症状を引き起こす病気です。 名前に「膀胱」とついているとおり排尿のタイミングを調節する膀胱の働きに関係していますが、明確な原因が見つからないことも多いといわれています。 症状としては女性に多くみられ、特に40代以降の女性では、おしっこをしたいと思った時に余裕がない、外出時にトイレの場所が気になる、といった訴えが目立ちます。 一方で、最近の調査では、患者数の合計としては男性の方が多いこともわかってきました。これは、前立腺肥大などに伴う排尿障害と一緒に起きているケースも含まれるためと考えられています。 患者さんの数としてはとても多いものの、恥ずかしさから誰にも相談できず、市販の尿もれパッドなどで対処しながら日々を過ごしている方も少なくありません。年のせいだから仕方ないと我慢してしまいがちですが、過活動膀胱は治療によって改善が期待できる病気です。
過活動膀胱の症状と影響
「急にトイレに行きたくなる」切迫感
過活動膀胱の代表的な症状は、急に強い尿意を感じる「尿意切迫感」です。通常は、ある程度我慢できる余裕があるはずですが、過活動膀胱ではその余裕がなく、今すぐトイレに行かないと間に合わないと感じてしまいます。中には、トイレにたどり着く前に漏れてしまうケースもあります。
失敗した経験、余裕がなかった経験
たとえば、
・おしっこを失敗したことがある
・おしっこしたい時に、だいたい余裕がない
そんな経験がある方は、過活動膀胱かもしれません。過活動膀胱は、恥ずかしいことではありません。適切に治療すれば症状の改善が期待できるよくある病気です。
外出先での緊張感
過活動膀胱の症状によって、日常生活にもさまざまな影響が出てきます。外出先では必ずトイレの場所を確認したり、長時間の移動や会議、映画など、すぐにトイレに行けない状況を避けるようになったり。頻繁にトイレに立つことで、周囲の目が気になってしまうというお悩みも多く聞かれます。外出そのものを控えるようになってしまった方も少なくありません。
咳や運動で漏れるのは別の病気です
咳、くしゃみ、重い物を持つ、運動中などに少し尿が漏れてしまう時がある方もいますが、これは過活動膀胱と別の病気です。「腹圧性尿失禁」といって、原因も治療法も異なりますので、医療機関でしっかりと診断することが大切です。
過活動膀胱の原因と診断
過活動膀胱は、膀胱の収縮をコントロールする仕組みに異常が起き、膀胱が過敏に反応してしまうことで発症すると考えられています。本来は尿がある程度たまってから排尿が必要になりますが、過活動膀胱では膀胱がまだ十分に膨らんでいない段階で強い尿意が起きてしまいます。
神経系の異常や加齢による筋力低下のほか、原因が特定できないケースも少なくありません。脳卒中やパーキンソン病、糖尿病などが背景にあることもあります。
診断には、問診や尿検査に加えて、排尿日誌の記録や、超音波での膀胱の残尿確認などが行われます。また、同じような症状が出る他の病気(尿路感染症や膀胱炎、前立腺の病気など)との鑑別も大切です。
過活動膀胱のセルフチェック
症状の程度は、以下の表で確認できます。
●過活動膀胱症状スコア(OABSS)
| 質問 | 症状の内容 | 頻度 | 点数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 朝起きた時から寝る時までに、何回くらい尿をしましたか? | 7回以下 | 0 |
| 8~14回 | 1 | ||
| 15回以上 | 2 | ||
| 2 | 夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか? | 0回 | 0 |
| 1回 | 1 | ||
| 2回 | 2 | ||
| 3回以上 | 3 | ||
| 3 | 急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか? | なし | 0 |
| 週に1回より少ない | 1 | ||
| 週に1回以上 | 2 | ||
| 1日に1回くらい | 3 | ||
| 1日に2~4回 | 4 | ||
| 1日に5回以上 | 5 | ||
| 4 | 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか? | なし | 0 |
| 週に1回より少ない | 1 | ||
| 週に1回以上 | 2 | ||
| 1日に1回くらい | 3 | ||
| 1日に2~4回 | 4 | ||
| 1日に5回以上 | 5 |
質問3が2点以上、かつすべての点数の合計が3点以上で過活動膀胱が疑われます。
過活動膀胱の治療法
まずは生活習慣の見直し
軽度の場合には、生活習慣の改善が症状の緩和につながることがあります。たとえば、水分やカフェインの摂取タイミングを調整したり、規則的な排尿習慣をつけることで、膀胱の緊張を和らげる効果が期待できます。
薬物療法で根本的な改善をめざす
症状が強い場合や、生活習慣の見直しだけでは改善が難しい場合には、薬物療法が選択されます。主に以下のような薬剤を使います。
・抗コリン薬(イミダフェナシン、ソリフェナシンなど)
膀胱の過剰な収縮を抑え、尿意を感じにくくする薬です。口の渇きや便秘などの副作用が出ることもあります。
・β3アドレナリン受容体作動薬(ミラベグロン、ビベグロンなど)
膀胱をゆるやかに広げて尿をためやすくする薬です。比較的新しいタイプで、副作用が少なく、継続しやすい薬として使用されています。
医師よりひとこと
過活動膀胱を当院で治療した方の多くが「もっと早く相談すればよかった」とおっしゃいます。それだけ、症状の改善が期待できる治療法があるということです。 たとえば、毎日のように生理用パッドが欠かせなかった方が、治療をきっかけに使用しなくて済むようになることも珍しくありません。 おしっこを失敗したことがある、おしっこしたいときに余裕がない、こうした経験がある方は、一度ご相談ください。誰にでも起こり得るよくある病気です。私たちは、少しでも不安や不便を減らせるように、お一人おひとりの生活に寄り添った診療を心がけています。